「臭いものには蓋をする」という諺がある。故事ことわざ辞典によれば「都合の悪いことや醜聞が他に漏れないように、一時しのぎの方法で隠すことのたとえ」とある。この世で最も臭いものはなんであろうか？と考えてみた。答えはすぐに浮かんだ。それは「私は死ぬ」ということだ。このことは、いま、この地球上で生きているすべての人の共通問題でもある。
「健康」とか「長寿」ということが、日々、マスメディアをはじめ注目されているが、見方を変えれば、死を遠ざけようというフレーズにも聞こえる。
よりよい生活を送ることは勿論大切であるが、その先には死が待っているという現実を認識して生きていくことは非常に大事なことではないだろうか。こんな暗くて陰気臭いことは考えたくない、という人は多いであろう。しかしながら、「私が死ぬ」ときは必ずやってくるのだ。それは今晩かもしれない。「生死一如（しょうじいちにょ）」という仏教の言葉にあるように、「生きること」と「死ぬこと」は表裏一体なのである。
とりわけ、生死問題においては蓋は開けっ放しにして真正面から向き合うことが大事である、と私は考える。
