手品師(浄土真宗の教えについて)

「浄土真宗の信心について」を中心に綴ります

選民思想

 選民思想の大きな弊害の出来事として第一次世界大戦にみることができます。下記、抜粋(小学館日本大百科全書)です。
『 選民思想は、20世紀に入って、とくに第一次世界大戦後のイタリア、ドイツ、日本における経済的・政治的危機状況のなかで、ナショナリズムと結び付いたファシズム運動となり、再度、悲惨な世界戦争を引き起こす誘因となった。
 イタリアでは、ムッソリーニが、民族とは生成・発展する「精神の力」であり、国家は民族が政治形態において具現化されたもの、と述べ、古い民族国家は指導者階級が「上から」つくった国家であるが、ファシズム国家は「下から」形成された新しいタイプの国家であるとして、イタリア民族の世界史における使命感を鼓舞したのであった。
 ドイツでは、1870年代以降、ゴビノーの『人種不平等論』(1853〜55)やH・S・チェンバレンの『19世紀の基礎』(1899〜1901)などの人種理論を根拠に、アーリア人種の優越性と「血の純潔」の思想が強調されてきた。ここでは、民族は生活の基礎としての耕すべき土地をもたなければならないから、土地を離れたユダヤ人は名誉を知らない民族である、とされた。そして第一次大戦後のナチズム運動のなかで、「血と大地」「ゲルマン民族の優越性」「反ユダヤ主義」がますます高唱され、『世界に冠たるドイツ』という国歌の下に、ドイツ民族の統一を図り、ドイツ人による世界支配を正当化する思想が内外に喧伝(けんでん)された。
 日本の場合には、日本民族万世一系、神聖不可侵の天皇をいただく天孫民族であり、日本は「神国」であるとして、とくに「十五年戦争」時代に入ると、天孫民族による世界支配すなわち「八紘一宇(はっこういちう)」の思想によって「大東亜共栄圏」の実現という名目で日本のアジア侵略が正当化された。
 第二次大戦後のアメリカによる自由社会を守るという思想や行動は、イデオロギーと結び付いた選民思想の変種といえるし、また中東にみられる宗教的対立による紛争も選民思想を根底にしている場合が多い。』
 「わたしは選ばれた人間である」という強い思い込みは、いろいろな弊害を生みます。最悪の結果として、殺し合いまでに発展することを歴史は物語っています。


 では、「浄土真宗の教え」という視点からみてみるといかがでしょうか。
 いつでも・どこでも・だれでも救うと誓われている阿弥陀さまの立場においては、私(自分)は選ばれし者、と自負していようがいまいが全く関係ありません。平等です。逆に、救われる私(自分)の立場からみますと、(私は選ばれし者、と思い込むことは)単なるひとりよがりの何ものでもありません。選民思想的発想は、日々生活していく上だけでなく、阿弥陀さまの救いという視点からみましても大きな弊害となっています。
おかげさまで 今日も 南無阿弥陀仏


選民思想(せんみんしそう)
自分たちは神によって選ばれた特別な民族・人種である、という信仰、確信。
日本大百科全書より