手品師(浄土真宗の教えについて)

「浄土真宗の信心について」を中心に綴ります

東条英機の言葉(2)

 

さらばなり 

有為(うい)の奥山 

けふ(今日)越えて 

弥陀のみもと(御許)にゆくぞうれしき

 

A級戦犯罪となった、元首相・陸軍大将 東条英機が処刑前日に詠んだ辞世の句のうちもっとも注目すべき一首である。「有為」とは、迷い濁りの世の中、無為(涅槃)たる仏の世界に対する言葉で、お念仏により、迷いの長い道を今ここに越えて、阿弥陀仏のみもと(無為の世界・西方浄土)へゆかれるうれしさを詠う。「さらばなり」は南無阿弥陀仏のお念仏を象徴しているようにも見える。また「有為の奥山けふ越えて」の言葉は、後にふれているが、花山氏がはじめて東条らA級戦犯者に会い仏法を語った時に、日本の「いろは歌」のことを話したといわれており、東条は身動きせずに聞いていたと言われている。仏教の真髄を詠い込んだ「いろは歌」に出ることの一節が、迷いの現実世界からのがれる言葉として、彼の頭に強く残ったと思われる。

【A級戦犯者の遺言 青木 馨 法蔵館 P76、P77より】

 

「いろは歌」が、仏教(涅槃経の一節といわれている)と深く関連しているとは知りませんでした。東条英機が処刑前日に詠んだ辞世の句「さらばなり〜」は、以前から知っていましたが、あらためて、じっくり読み返しますと、「いま・ここで・わたしに、はたらいている南無阿弥陀仏」の言いようのない深み、を感じます。

おかげさまで 今日も 南無阿弥陀仏

 

いろはうた(いろは歌)

いろはにほへと ちりぬるを(色は匂えど 散りぬるを)

意味:匂うがごとき 喜びや楽しみもすぐ散ってしまう

 

わかよたれそ つねならむ(我が世誰ぞ 常ならむ)

意味:人の世の移り変わりを誰がとどめられようか

 

うゐのおくやま けふこえて(有為の奥山 今日越えて)

意味:今日、悟りを完成して苦しみの山々を超えることができた

 

あさきゆめみし ゑひもせす(浅き夢見じ 酔ひもせず)

意味:浅はかな夢を見ることも快楽に酔うこともすでに無くなった

 

【浄土真宗本願寺派 九条山  淨教寺ホームページより】

http://onkoshya.sakura.ne.jp/joukyouji/441/

 

棟方志功 「いろは双妃図」より