― 五木さんは、自分なりの死生観を持つ、それが大事だと、本の中でお書きになっていらっしゃいますけれど、これはどういうことですか。
五木:
結局、人間は、老いて、そしてその後はこの世からいなくなっていくわけですから、そのことをただ漫然と考えていると、すごく虚(むな)しい感じがしませんか。いずれ終わるのだけれど、終わったらどこへ行くのか、そして、どのようになるのか、まったくその覚悟のないままに死を迎えるのは、非常に不安だし、気持ちの上でも落ち着かないと思います。
いろんなことをやってきたけれど、すべてそれも、死という最後の場面で終わってしまうのかという、はかなさ、あるいは虚しさみたいなものを感じないで人生を締めくくることができないか、贅沢な話だけれど、それを考えることが大事だということです。
― まさに生きるほうの「生き方」ではなくて、亡くなるほうの「逝き方」、これも大事だということですね。
【人生百年時代の歩き方 五木寛之 NHK出版 P90、P91より】
自分の「逝き方」を明確に分かっている(知らされている)人の「生き方」は、とても充実しているでしょう。自分の「逝き方」に留意していくことは、人生を歩む上で、とても大事なことだと思います。