一
月のひかりはお屋根から、
明るい街をのぞきます。
なにも知らない人たちは、
ひるまのやうに、たのしげに、
明るい街をあるきます。
月のひかりはそれを見て、
そつとためいきついてから、
誰も貰はぬ、たくさんの、
影を瓦にすててます。
それを知らない人たちは、
あかりの川のまちすぢを、
魚のやうに、とほります。
ひと足ごとに、濃く、うすく、
伸びてはちぢむ、氣まぐれな、
電燈(でんき)のかげを曳きながら。
二
月のひかりはみつけます、
暗いさみしい裏町を。
いそいでさつと飛び込んで、
そこのまづしいみなし兒が、
おどろいて眼をあげたとき、
その眼のなかへもはいります。
ちつとも痛くないやうに、
そして、そこらの破(あば)ら屋が、
銀の、御殿にみえるよに。
子供はやがてねむつても、
月のひかりは夜あけまで、
しづかにそこに佇(た)つてます。
こはれ荷ぐるま、やぶれ傘、
一本はえた草にまで、
かはらぬ影をやりながら。
【『金子みすゞ童謡全集』(JURA出版局)より】
「月のひかり」は、「阿弥陀さま」のことをいっているのでしょう。阿弥陀さまは、私が寝ていようが、起きて楽しく遊んでいようが四六時中、やさしく私を見守ってくれています。そんなこともつゆ知らず、日々生活している私です。そんな阿弥陀さまのやさしい心に触れたとき、「南無阿弥陀仏」と感謝のお念仏が自然と溢れるのです。阿弥陀さまと私の間に距離はありません。この今、その阿弥陀さまのやさしさにふれてみたい、ものです。
今回紹介しました金子みすゞさんの詩(月のひかり)から、そんなことを思いました。いかがでしょうか。
おかげさまで 今日も 南無阿弥陀仏